平成29年12月19日(火)法務大臣臨時記者会見の概要

平成29年12月19日(火)法務大臣臨時記者会見の概要

本日,松井喜代司関光彦の2名の死刑を執行しました。この2名に関する犯罪事実の概要等については別途お配りした資料のとおりです。それぞれ概略を申し上げますと,まず,松井喜代司については,交際していた女性1名とその両親をハンマーで殴りつけて殺害し,更にその女性の親族である女性1名と女児1名も殺害しようとした殺人,殺人未遂の事件です。関光彦については,見知らぬ女性を強姦して怪我を負わせ,その後,その女性の家に侵入し,女性の親族から金品を強取した際に抵抗されたため,その親族1名の首を絞めて殺害し,その後,順次帰宅した女性の両親及び4歳の妹を包丁で刺して殺害し,金品を強取し,女性を再度強姦し,包丁で切りつけ怪我を負わせるなどした強盗殺人,殺人,強盗強姦,強姦致傷等の事件です。いずれの事件をみても,誠に身勝手な理由から被害者の尊い人命を奪うなどした極めて残忍な事案であり,それぞれの被害者や遺族の方々にとって無念この上ない事件だと思います。そして当然のことながら,いずれの事件も裁判所において十分な審理を経た上で最終的に死刑が確定したものです。本日の死刑執行は以上のような事実を踏まえ,鏡を磨いて,磨いて,磨いていく,そういう心構えで慎重にも慎重な検討を加えた上で死刑の執行を命令した次第です。

死刑執行に関する質疑について

【記者】
今回,犯行時少年だった者の死刑執行ということを踏まえて,死刑に対する大臣のお考えを改めてお聞かせください。

【大臣】
申し上げるまでもありませんが,死刑は人の命を絶つ,極めて重大な刑罰であることから,その執行に際しては,慎重な態度で臨む必要があると考えています。また,それと同時に法治国家においては,確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないことは言うまでもないことです。特に死刑の判決は,極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し,裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものですから,法務大臣としては,裁判所の判断を尊重しつつ,法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものと考えています。また,先ほども申し上げたとおり,今回の2件の事案については,誠に身勝手な理由から,被害者の尊い人命を奪うなどした極めて残忍な事案であり,被害者や遺族の方々にとって無念この上ない事件だと思います。本日の死刑執行は,これらのことを踏まえ,鏡を磨いて,磨いていく,そうした心構えで慎重にも慎重な検討を加えた上で死刑執行命令を発したものです。

【記者】
元少年であったことについて言及がないようですが,これについてはどうですか。

【大臣】
今回の事案ですが,関光彦については,犯行時少年でした。個々の死刑執行については,先ほど申し上げたとおりの考え方に則って判断した次第です。犯行時少年であったことについては,死刑執行の判断に関わる事項ですのでお答えは差し控えさせていただきます。

【記者】
元少年の執行ということについて,1997年に執行された永山則夫元死刑囚以来かと思いますが,少年の死刑執行数について分かれば教えてください。

【大臣】
死刑執行についての事案の概要等を公表するようになった平成19年12月以降では,今回1件目ということになります。

【記者】
現在未執行の収容されている犯行時少年だった死刑囚の数を教えてください。

【大臣】
本日現在で法務省において把握している死刑判決確定者は123名です。その内訳については,お答えは差し控えさせていただきます。

【記者】
少年犯罪に関することなので答えは差し控えるということでしたが,一般的な大臣のお考えとして,少年法の趣旨を踏まえて,犯行時少年だった死刑囚に対する執行についてのお考えを教えてください。

【大臣】
犯罪を犯した者の年齢に関わる法律ですが,大人のケースと少年のケースで対象とする年齢により,今現在,法の枠組みが違うことは事実です。その意味で,事実として今回の1人は犯行時少年だったということです。個々の死刑執行の判断に関わることですので,私からの発言は控えさせていただきたいと思います。

【記者】
いずれも再審請求中であったと思われますが,その事実関係と再審請求中であるということが大臣の執行命令に与える影響について教えてください。

【大臣】
今回死刑が執行された者による再審請求や恩赦出願の事実の有無等については,法務大臣である私からお答えすることは差し控えさせていただきます。

【記者】
先ほど確定死刑囚について123人ということでしたが,それは袴田巌さんを含んだ数字ということでよろしいでしょうか。

【大臣】
未執行者の人数について,現時点で法務省が把握している死刑判決確定者123名には袴田氏も含まれています。

【記者】
123人の内,再審請求中の確定者は何人いるのでしょうか。前回の会見時においては7割超えの90何人だったかと思うのですが。

【大臣】
現在,再審請求中の者は94名です。

【記者】
これは執行された2人を除いてという理解でよろしいでしょうか。

【大臣】
今現在で法務省が把握している再審請求中の者が94名ということです。

【記者】
今回,大臣就任後初めての死刑執行を命ぜられることとなったと思いますが,初めての執行となった感想をお聞かせください。

【大臣】
法務大臣として就任記者会見の中でも申し上げたところですが,死刑は人の命を絶つ極めて重大な刑罰であるので,その執行に当たっては,極めて慎重な立場で臨む必要があるという思いで法務大臣の務めを果たしてまいりました。同時に,日本は法治国家として,法の支配の下に様々なルールを決めながら対応しており,法治国家においては確定した裁判の執行が厳正に行われなくてはならないことは言うまでもないことです。特に死刑判決は,極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し,裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものであり,法務大臣としてはその裁判所の判断を十分に尊重しつつ法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものと考えています。極めて重大な死刑執行ですので,今回その判断に当たっては,そうしたことを十分に考慮しながら慎重の上にも慎重にという姿勢でやらせていただきました。

【記者】
今回,犯行時少年だった者の執行ということで非常に世間の注目を集めると思います。昨年には,裁判員裁判で初めて死刑を言い渡された元少年の死刑も確定しています。裁判員裁判の経験者などからも,死刑に対する情報公開をもっと進めるべきではないかという声もあります。再審請求中であったかどうか,また執行の順番がどのように決められているのか,こういったことについて情報公開を進めるべきだという声もありますが,大臣はどうお考えでしょうか。

【大臣】
裁判員裁判も含めて裁判の在り方については,国民の皆様にしっかりと御理解いただき,また御協力をいただくべきことだと思います。国民の皆様の御理解を得るために,情報公開を進めることは大変重要であると考えています。国家の刑罰権の作用ですが,本来,刑の執行そのものに限られるのであって,それを超えて国家機関が死刑の執行に関する情報を公表することについては,死刑の執行を受けた者やその関係者に対して不利益や精神的苦痛を与えかねないこと,また他の死刑確定者の心情の安定を損なう結果を招きかねないことなどの問題があるため,慎重に検討する必要があると考えています。現在の公表の範囲については,氏名,生年月日,犯罪事実,執行場所を公表しており,それを超える事項については公表を差し控えることが相当と考えています。

【記者】
少年法の一般的な御見解をお伺いしたいのですが,18歳未満の未成年者については,死刑相当と処するときは無期懲役とするということで事実上死刑が禁じられています。18歳,19歳については死刑は許容されていますが,この規定についてはどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
今,成年年齢の引下げ等の議論もあり,それに関係する形で少年法の改正も新たな検討もしているところです。今,この件について私の方からお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

【記者】
一般的に再審請求中の死刑囚の執行に対する考え方をお聞かせください。

【大臣】
今回死刑が執行された者による再審請求の有無については,私からお答えすることは差し控えさせていただきます。一般論として申し上げますが,死刑執行に関しては,個々の事案について関係記録を十分に精査し,刑の執行停止,再審事由の有無等について慎重に検討し,これらの事由等がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発することとしています。また再審請求に関しては,再審請求を行っているから執行はしないという考え方は採っていないということです。

【記者】
再審請求をしているからというお考えはあると思いますが,現実として再審請求から実際に再審が認められて無罪に至るケースもあるわけですが,死刑廃止を求める団体から死刑囚の権利として認められるべきであり,再審請求中の死刑囚に対して死刑を執行することはその権利を奪うものだという指摘もありますが,これについてはどう思いますか。

【大臣】
未執行の死刑確定者の心情に与える影響等もありますので,私からのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

【記者】
死刑執行については,欧州諸国や人権団体から制度の廃止を求める声がありますが,これに対するお考えをお聞かせください。

【大臣】
死刑制度の存廃について,国際機関における議論の状況,諸外国における動向等を参考にしつつも,基本的には各国において国民感情,犯罪情勢,刑事政策の在り方等も踏まえ,独自に決定すべき事柄であると思っています。様々な御議論があることについては承知をしているところです。その上で,国民世論の多数が極めて悪質,凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており,多数の者に対する殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪は未だ後を絶たない状況に鑑みますと,罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては,死刑を科すこともやむを得ないという考え方が今の現状ではないかと思っています。

【記者】
今回の2人に対する死刑執行の署名をしたのはいつですか。

【大臣】
署名日は平成29年12月15日です。

【記者】
大臣の地元で12月17日に,死刑廃止を求める市民団体が集会を開いて,同日,大臣の地元の事務所に死刑執行をやめるよう求める要請書を出したとのことですが,大臣は把握されていますか。

【大臣】
様々な形で,様々な機関や団体から要望書をお持ちいただいていることは承知しています。

【記者】
17日のものについては具体的に目を通されたりしましたか。

【大臣】
承知しています。

【記者】
これは署名をした後だと思いますが,どのように受け止めましたか。

【大臣】
この間,様々な要請は各団体からいただいています。国内,あるいは国際的な動向もあり,そうしたことについて様々な意見が寄せられていることは承知しています。