令和6年7月26日(金)津久井やまゆり園事件に関する質疑について

令和6年7月26日(金)法務大臣閣議後記者会見の概要

死刑制度の在り方に関する質疑について

【記者】
 相模原の知的障害者施設で、入所者の方々が殺害された事件から今日で8年となります。
 この事件をきっかけに「共生社会の実現」というものが掲げられることになりましたが、これがどの程度進んでいると考えますでしょうか。
 優生思想や障害者への差別などを根絶するとして、政府は対策推進本部を立ち上げましたが、法務大臣としての所感と、今後具体的にどのような取組を行っていくのかお答えください。
 あと、植松死刑囚はまだ刑が執行されていませんが、この処遇についてはどうお考えでしょうか。

【大臣】
 まず、御指摘の事件、相模原の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者の方々45人が殺傷された事件から8年ということです。
 お亡くなりになられた方々に、改めて心から哀悼の意を表しますとともに、御家族の方々にも心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 また、御指摘の事件で被害に遭われた方々や御家族に、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 「共生社会の実現」に関しては、この大きな事件の後、取組が行われましたけれども、この検討チームというのが構成されて、検討を行い報告書が出されました。「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」の報告書において、共生社会の推進に向けた取組、これが再発防止のための提言の筆頭に、一番最初の項目として挙げられているわけです。
 事件の再発防止策の検討に当たって、このチームが重視した3つの視点として、まず、共生社会の推進というのが挙げられています。
 2つ目に、退院後の医療等の継続的な支援を通じた地域における孤立の防止、3つ目に、社会福祉施設等における職場環境の整備が挙げられています。
 それに向かって、政府も法務省も取り組んできているところです。
 現時点でどれぐらい進んでいるかということを、客観的、具体的に評価するというお答えは難しいのですが、法務省の人権擁護機関においては、共生社会の実現に向けて、障害を理由とする偏見・差別をなくそう、この命題を啓発活動強調事項の一つとして掲げて、各種の人権啓発活動、調査救済活動に取り組んでいるところです。
 また、御指摘があった旧優生保護法に係る今月3日の最高裁の判決を受けて、本日の閣議で優生思想及び障害者に対する偏見や差別の根絶に向け、これまでの取組を総点検し、教育・啓発等を含めた取組を強化するため、内閣に「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」が設置されました。
 法務省の責任も重大なものがあるというふうに思っています。
 我が省では、先に述べた検討チームの提言を常に原点に置きながら、今般の最高裁の判決を重く受け止め、また、障害を理由とする偏見・差別のない共生社会の実現のために、様々な方法を駆使しながら、人権擁護活動に最大限の効果を上げられるように取り組んでいきたいと思いますし、また、対策推進本部の取組にも、積極的に政府を引っ張るような心構えで参画し、取り組んでいきたいと思っています。
 個別の死刑執行、そして個々の死刑確定者の処遇、これについては、お答えすることを差し控えざるを得ないことを、御理解いただきたいと思います。
 多くの国民にとって、非常に重要な関わり合いを持つ刑事罰の在り方ですので、国民世論にも、やはり十分配慮する必要があります。
 現在、社会が、様々な人類の歴史を経て形成されてくる過程で、色々な議論や取組があり、また、今もそれが変化しているのですけれども、社会の安定や、それぞれの立場の方々の心の安定といったことについても、きめ細かく、慎重に丁寧に、議論していく必要があると思います、ということを、私からも理解を求めるという形で、お話させていただきました。
 日弁連の皆さんのお気持ちをしっかりと受け止めながら、今申し上げたことについて、引き続き法務省としても、深く考え抜いて、対応を考えていきたいというふうに思っています。
 もう少し具体的に申し上げれば、国民世論のかなり多数の方々が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑をやむを得ないというふうに考えておられ、また、多くの方々を傷つけ、殺傷する強盗殺人等の凶悪犯罪が、現実にまだ後を絶たないという状況があります。
 そういった観点からすると、即刻死刑を廃止するということは、現時点では適当ではないと考えているところでもありますが、しっかりと様々な御意見を踏まえていくことが重要だというふうに思います。
 拘禁刑等の関係ですが、拘禁刑は、改善更生を図るために必要な作業・指導を課すものであって、これまでの懲役刑に比べますと、明らかに改善・更生に重きを置くという矯正の仕組みですが、かといって、その応報性を全て無くしてしまうというものではありません。
 ある種、応報性というのはしっかりベースとして残っているわけですので、死刑制度と整合性を欠くということにはならないと思います。