令和6年10月11日(金)法務大臣閣議後記者会見の概要
袴田氏の無罪確定に関する質疑について
【記者】
袴田巖さんを無罪とした静岡地裁の再審判決が9日に確定しました。
事件から58年余りを受けて、一度は死刑が確定した方が二度の再審請求の末、最終的に証拠の一部が捜査機関によるねつ造だったと認定された上で無罪となったことについて、大臣としての受け止めをお聞かせください。
また、再審をめぐっては、法制度の不備を指摘する声が国会議員などから上がっており、最高検も本件の再審請求手続が長期間に及んだことなどについて検証するとしています。法務省として再審の在り方について改めて検証するのかどうかや、法改正の必要性についてどのように考えているか、お考えをお聞かせください。
【大臣】
この判決が出て、検察が判断したことについて、もちろん承知しています。
検察は、判決については、色々承服できないものがあり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容があると思われるが、結果として袴田氏が置かれてきた相当な長期間にわたる法的地位が不安定な状況が継続することは相当ではないとして、控訴しないという判断に至った旨の談話を発表したことを承知しております。
この判断につきましては、検察当局で判決の内容を精査、検討の上、法と証拠に基づいて決定したものであると認識しているところです。
再審制度の在り方につきましては、法改正の必要性も含めて現在、様々な御議論があるということは承知しております。再審についての議員連盟が、超党派でできたということも、承知しております。
その上で、法務省においては、現在、法務省で開催している「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」において協議が行われておりますので、まずはその同協議会において、充実した議論を重ねていただくことが重要だというふうに考えております。
【記者】
関連でお伺いします。袴田さんの無罪確定を受け、死刑執行への影響について大臣のお考えを伺えますでしょうか。
【大臣】
死刑については、個別の案件に関連してお答えすることは差し控えたいと思います。
死刑についての私の判断というのは、就任記者会見で申し上げたとおりです。
【記者】
司法制度についてお尋ねします。
袴田巖元死刑囚は、無罪確定になりました。巖さんは無罪になった、元死刑囚の5人目になりました。海外でも注目されている、こんな冤罪事件の被害を踏まえて、死刑制度の廃止を本格的に検討する時期が来たと思いませんか。
また、畝本直美検事総長の談話は、証拠がねつ造になったことをなかなか認めないことで、巖さんをまだ犯人として扱っているみたいですけれども、極めて重要な問題と、巖さんの弁護人が指摘しました。それに対して、大臣のお考えをお聞かせください。
【大臣】
死刑制度について、他の国との違いも挙げながら批判をされる御意見があるということも承知しております。その上で、各国の刑事司法制度には、様々な違いがあるので、それぞれの国において、制度全体として機能するように成り立っております。
こうしたことを前提に、基本的には各国において、国民感情や犯罪情勢、そして刑事政策の在り方等を踏まえて、独自に決定すべき問題だというふうに考えております。
それから、いわゆる検察の談話につきまして、御批判があるということも承知しております。検察の談話は、検察側が出されたことであり、その談話の内容の詳細について、私の方で申し上げることは、個別の案件に対する個別の検察の判断ですので、差し控えたいというふうに思いますが、検察は、この無罪だという判決は受け入れているわけですので、今おっしゃったような御意見は、私は当たらないというふうに思っております。不控訴の判断を行った理由を説明するために必要な範囲で、判決内容の一部に言及したものと承知しているところです。
【記者】
死刑制度について、確かに日本は、自分で自分の制度を決めるべきだとみんな思っているんですけれども、ただ、戦後、5人の元死刑囚が結局無罪になったことは、明らかにこの制度に問題があると言わざるを得ない状況です。
なので、死刑制度の廃止を検討しない、議論しないというのは、それでいいのかっていうことです。お願いします。
【大臣】
これは、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題ですので、まずは、国民の世論に十分配慮しつつ、社会における整備の実現等の様々な観点から慎重に検討していくべき問題だと考えております。
既に最高裁の判決でも、その犯行の悪質性や、その判断基準をもって、死刑にするのがやむを得ない場合があるというふうに裁判所側で判断していることもあります。
そうした事を踏まえながら、まだまだ凶悪犯罪が後を絶たない状況を鑑みると、罪責が著しく、重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科すこともやむを得ないというふうに、裁判所が判断する場合があり、私としては、現段階では死刑制度廃止ということは、適当ではないというふうに考えております。
【記者】
いわゆる再審法の改正を求める声が圧倒的に強くなっていて、先ほども御紹介いただきましたけれども、改めて大臣のお考えを伺えればと。
【大臣】
再審法について、色々な御意見があるのは存じ上げておりますが、個人的には、私は再審法の議連を作るときに、お誘いいただいたのですけれども、法務委員会の筆頭理事という立場にあり、色々な意見が割れているときには、まずは世の中の意見などを踏まえたいということで、議連に入らなかった経緯もあります。
やはり、先ほども申し上げたとおり、刑事司法の根幹に関わるものであり、制度全体として考えなければいけないと思っておりますので、法務省の「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」がありますので、まずはその協議会でしっかりと検討してもらうことが重要だというふうに考えております。
先ほどの袴田さんの事件についてですが、やはり検察の方の声明でもありますけれども、相当の長期間にわたって、袴田さんが法的に不安定な地位に置かれたという状況については、私も大変申し訳ないという気持ちを持っているということだけはお伝えしたいというふうに思います。